第十九章

 

4-286:到着〔14歳:LEVEL40〕
絞死の用意した車に乗り、俺達はメジ大陸へと向かった…が、例の如く事故った。
車は衝突寸前に盗子が魔法で転送したため、どの地に被害が及んだかは謎だ。
にしても、盗子の奴…盗子のくせに魔法とは生意気にも程がある。盗子の分際で。
〜メジ大陸〜
勇者「まったく酷い目に遭った…が、どうやらナシ大陸は抜けたようで一安心だ。」
盗子「多分アタシ、地球規模でヤバい爆弾をどっかに落としたんだよね…。」
絞死「やはり自家用車に核は無謀でしたか…残念です。」
勇者「ところで、メジ大陸ってどんな大陸なんだ?自慢じゃないが俺は全く知らん。」
絞死「殺戮・差別てんこ盛りです。逃げない人民はドMとしか言いようがないです。」
勇者「なんだ、盗子の生まれ故郷か。」
盗子「いや、アンタもだけどね…。」
立場は真逆だが。

 

4-287:招集〔14歳:LEVEL40〕
なんとか辿り着いたメジ大陸。あとは大魔王城に乗り込むだけだが…どうするか。
勇者「ぶっちゃけ、このメンツで乗り込んでも勝てる気がしない。」
盗子「いや、でも賢二とか姫とかと合流し…ても、勝てる気がしないね…確かに…。」
絞死「それは出発前に気づいてほしかったですが。」
勇者「敵には大魔王、帝雅、暗黒神、竜神、女神、夜玄…6人は強敵がいるんだ。」
盗子「どう考えても戦力不足だよね…。こっち子供しかいないしね…。」
絞死「とりあえず、「招集玉」でも上げておきますか?」
〔招集玉(しょうしゅうだま)〕
誰かを呼び集めたい時に使う花火のような感じのアイテム。
見るとなんとなく状況を察することができる。
勇者「そうだな、盗子クサいし。」
盗子「「消臭」と違っ…てゆーかクサくないからっ!!」
「盗子クサい」なのか単にクサいのか。

 

4-288:予感〔14歳:LEVEL40〕
招集玉でとりあえず状況を知らせ、誰かを呼んでみることにした俺達。
思いがけない素敵な誰かが網にかかるのを祈りつつ、まずは腹ごしらえといこう。
〜メジ大陸:シムソー国〜
勇者「ほぉ、荒野のような地ばかりかと思えば、栄えてる国もあるんじゃないか。」
絞死「前の「魔王」が城を構えたという、いわく付きの地です。人は荒れてますよ。」
勇者「困った支配者もいたもんだな。」
盗子「いちいち突っ込むのもなんだけどアンタの親だよ…?」
男A(お、オイあれ…あれって、「勇者:凱空」じゃないか?)
男B(あっ、本当だ!あの蒼髪、間違い無い!全然老けて…むしろ若返ってるが!)
盗子「ねぇ勇者、なんか噂されてない?親父の方と勘違いされてるっぽいけど…」
勇者「ああ、気づいているさ。奴らが、何を考えてるのかってことも…な。」

逃げよう。
「食い逃げ」絡みが濃厚だ。

 

4-289:懇願〔14歳:LEVEL40〕
どうやら俺は昔の親父に似ているらしく、各所でチラ見されて結構ウザい。
奴はどうせろくなことしてないだろうから、無関係という線で押し通そうと思う。
勇者「よく聞け愚民ども!俺の名は勇者だ、親父…凱空とは何の関係も無い!」
盗子「いや、何その息子宣言!?」
男A「そうかい、やっぱり関係者か…。た、頼む!お願いだ!この国を助けてくれ!」
勇者「む…?なんだ、訴える系じゃなく、まさかの正統派リアクションなのか?」
男B「大魔王軍のせいで、ただでさえ悪かった治安が更に…もう限界だ…!」
勇者「限界…?違うな。人の語る「限界」の9割はただの「弱音」だ!まだやれる!」
盗子「勇者、それ「搾取する側」の目線だよね…?」
絞死「でも、私も似たような意見ですね。他人に頼ろうとか甘いんですよ。」
勇者「だがまぁいい、聞くだけ聞いてやろうじゃないか。飯でも食いながらな!」
勇者は聞くだけのつもりだ。

 

4-290:料理〔14歳:LEVEL40〕
なにやら救いを求められたので、まずはそれを口実にメシをおごらせることにした。
〜とある食堂〜
男A「では早速、こちらのお願いを…」
勇者「その前に店主、ここのオススメ料理は何なんだ?俺は味にはうるさいぞ。」
店主「あ、ハイ。人の…」
盗子「えっ!人のっ!?」
店主「おっと失礼、「人間の踊り食い」です。」
盗子「言い直して何がどーなったの!?何その邪悪極まりない料理!?」
勇者「人間か…フッ、未知の領域だ。」
盗子「拒もうよ!そこはもうさすがに拒んどこうよ倫理的に!」
店主「さぁご賞味ください。どうぞ!」

無職「こ、こんばんわ…。」
さぁ踊れ無職。

 

4-291:捕獲〔14歳:LEVEL40〕
食卓に現れたのは、豪快にドレッシングをぶっかけられた無職だった。悪趣味だ。
勇者「よぉ無職。それは「私を食・べ・て☆」という捨て身の求愛行為の一種か?」
無職「いや、そんな赤っ恥さらすくらいならいっそ殺して欲しいです…。」
盗子「えっと…アンタ賢二と逃げたわけだし、やっぱ賢二もここにいんの?」
無職「あ、賢二さんはなんか優遇されてるですよ。たぶん今はお風呂に…」
勇者「それ「下ゆで」じゃないのか?」
盗子「あとは姫達か…。土男流とかはともかく、姫は簡単には捕まらないよね…。」
勇者「オイ店主!表の木に、ありったけのハチミツを塗ってくれ!」
盗子「虫か何かかよ!そんなんで集まってくれたら世話無いよ!」
店主「いや、実は…」

姫「じゅるっ(舐)」
実施済みだった。

 

4-292:義理〔14歳:LEVEL40〕
なんと、意外にも姫ちゃんも捕獲されていた。こんなに早く合流とはいつもと違う。
勇者「ひ、姫ちゃん!相変わらず期待を裏切らない期待の裏切りだな。ブラボー!」
姫「お久しぶりだね勇者君。約束のアイス…美味しかったよ。ハイ棒。」
勇者「おぉありがとう。今度盗子が死んだら刺してみるわ、眼球に。」
盗子「え!なに、死んでもなおイジめられるわけアタシ!?」
土男流「うぉー!師匠だー!アイス見つけたのは私だから褒めてほしいんだー!」
勇者「土男流までいたか。なんか仕組まれたみたいな状況だな。」
忍美「しのみんもなのだ!しのみんもい」
勇者「さて、じゃあそろそろ話だけでも聞いてやろうか。協力する義理は無いがな。」
忍美「だから無視はあんまりだって言っ」
男A「あ、ハイ。敵はこのシムソー国を乗っ取った悪の夫婦…「暗殺死」と「麻音」。」
若干身内の犯行だった。

 

4-293:前哨〔14歳:LEVEL40〕
聞けば、この国に迷惑かけてるのは暗殺美の両親っぽい。まぁわからんでもない。
そんな二人が現れたのは最近らしいが、国民の生活は急速に悪化したという。
協力する気はさらさら無かった俺だが、少し気が変わった。やってやろうじゃないか。
勇者「伝説の暗殺者が相手か…フッ、肩慣らしにはちょうどいいかもしれんな。」
盗子「ちょっ、アンタ本気!?相手は暗殺美の両親なんだよ!?」
勇者「だからこそ。」
土男流「それでこそ師匠だぜー!やっぱり絶対敵に回したくないんだー!」
絞死「前哨戦ですか…確かに、悪くないかもしれませんねぇ。」
勇者「このことは賢二には言うなよ?アイツは絶対反対しやがるからなぁ。」
無職「いや、言うなもなにも…。」
もうじきゆで上がる時間だ。

 

4-294:先陣〔14歳:LEVEL40〕
その後、なんとか生きていた賢二も合流し、皆で敵のいる城へと向かうことにした。
〜シムソー城〜
勇者「ふむ、ここがシムソー城か。なかなか邪悪な造りだ、旧魔王城なだけある。」
賢二「あ、あのさ勇者君、今回の敵ってどんな人達なの?やっぱ悪い人…?」
勇者「ん?まぁ気にするなさ。これから死ぬ奴の名なんか知っても意味無いのさ。」
盗子「ちょっ、何そのさりげないヒント!?」
勇者「まぁ安心しろ、一人は俺が片付けてやる。」
絞死「一人は私がもらいますよ。強さの証明を…したいのでね。」
姫「じゃあ残りは私が食べるよ。」
盗子「何と勘違いしてんの!?食べ物じゃないしそもそも残る計算でもないよ!?」
勇者「気をつけろよお前ら?敵は殺し屋だ、どんな罠があるかぁぁぁぁぁぁぁ…(落)」
勇者は先陣を切った。

 

4-295:徐々〔14歳:LEVEL40〕
勢い良く落とし穴にハマり、勇者は消えた。
どこかで見たような展開だが気にしたら負けだ。
〜城内:1階〜
絞死「アナタ方は、なんというか…ボケなきゃいけない決まりとかあるんですか?」
姫「ニューかくれんぼ…やるね、勇者君。」
賢二「鬼が隠れるとか反則だよね…。」
忍美「にしても、兵隊さんが一切いないのだ!なんか逆に怖いのだ!」
無職「あ、確か敵さんはご夫婦だけみたいですよ。自信の表れですよね、それ…。」
賢二「きっと罠で補ってるんだろうな…。」
盗子「び、ビビッたら負けだよ!きっとなんとかなるよ!」
姫「どうにかなっちゃうね。」
盗子「おっかないこと言わないで!大丈夫、ウチら6人が…って1人減ってるぅ!!」
土男流はどうにかなってた。

 

4-296:無事〔14歳:LEVEL40〕
勇者の次は土男流が消えた。
果たして誰かしら、無事に敵まで辿り着けるのだろうか。
〜城内:最上階〜
絞死「ハァ、ハァ、凄まじい、トラップの嵐、でしたね…。」


絞死「返事…無し。」
絞死はとっても参った。

 

4-297:巧妙〔14歳:LEVEL40〕
最上階まで辿り着けたのは、なんと絞死だけという情けない状況だった。
可哀相だが頑張れ絞死。
ギィイイイ…(扉)
絞死「どうも初めまして。アナタが「麻音」さん…ですね?」
麻音「あ、いらっしゃ〜い♪お客様なんて初めてだよぉ。ちょっと待ってねお茶…」
絞死「いえお構いなく。私はアナタ方お二人を、片付けに来ただけですから。」
麻音「え、2人?ん〜、それはチョ〜ット難しいかなぁ。」
絞死「…子供だからといって、甘く見ないでほしいものです。」
麻音「いや、そうじゃなくてパパ…買い物に出たきり…」
その頃―――
暗殺死「うぉおおおおおおおお!!」
無職「こ、この人が…!」
盗子「伝説の…暗殺者…!」

暗殺死「やっと人に会えたぁあああああああ!!」
巧妙な罠が裏目に。

 

4-298:受流〔14歳:LEVEL40〕
罠にかかった先で、盗子と無職は暗殺死に出会っていた。
どう足掻いても勝てない二人は、とりあえず説得から入ったのだった。
無職「というわけで、国民さんは困ってるですよ。支配とかヤメてもらえないです?」
盗子「あと、娘の友達に手ぇ上げたりしないよ…ね?」

暗殺死「じゃあ、死のうか。」
盗&無「聞いてぇええええええ!!」
その頃―――
〜牢獄〜
勇者「なるほど。つまり貴様は、王を補佐する職「王佐」だと言うんだな?」
老婆「そうニャ。時には「摂政」みたいニャこともしちゃう優れものニャのニャ。」
勇者「フッ、「殺生」か…気が合うじゃないか。」
老婆「ニャんか意味が違う気がするけどまぁいいニャ。」
勇者「つーか、いい歳して猫語は恥ずかしいからヤメてくれ。なんかムズ痒くなる。」
老婆「「猫耳族」の悲しい習性ニャ。軽くスルーしてもらえると助か…いニャい!?」
勇者は軽くスルーした。

 

4-299:本気〔14歳:LEVEL40〕
またまた場面は変わり、絞死は―――
ドガァアアアアアアアアン!!
絞死「ハァ、ハァ、さすがは「暗殺者」…素早さは尋常じゃないですねぇ。」
麻音「ん〜、キミもなかなかだけど、チョ〜ット荒いかなぁ。疲れちゃうよぉ?」
絞死「フッ…ご忠告、感謝します。」
絞死は3人に増えた。
麻音「だ〜か〜ら〜、増えても無駄だってばぁ。「幻体」なんて疲れるだけ…ぐっ!
絞死「フフフ…まぁ幻ですからねぇ。見えないもう1人がいても、不思議じゃない。」
麻音「…テメェ。」
絞死「やっと本気になってもらえたようで嬉しいです。これで腕試しになる。」
麻音「ナメてんじゃないさ、一人じゃ無理さ。 …いるんだろしのみん?出て来いさ。」
忍美「いっ!?い、イヤなのだ!怒ったあさみんママは鬼みたく」
麻音「鬼みたく…?」

忍美「す、素敵なのだ…。」
フォローしきれてなかった。

 

4-300:圧倒〔14歳:LEVEL40〕
一撃もらってキレちゃった暗殺美母。
その後、合流した土男流と3人で戦闘は再開されたのだった。
麻音「オラオラァー!さっきまでの威勢はどこいったのさ!?」
絞死「くっ…!まさかこれほどの実力とは…!」
麻音「こんなのまだまだ序の口さ。これから更なる地獄を見ることになるのさ。」
忍美「うわーん!ちっちゃい頃のトラウマが蘇るのだー!」
麻音「今でも十分ちっさいくせにホザいてんじゃないのさクソガキがー!」
土男流「うぉー!こんな状況だと知ってたら隠れてたんだー!迂闊だったぜー!」
麻音「さぁ全員まとめてかかって来いさ。正々堂々、受けて立ってやるのさー!!」
基本的に「暗殺」はしない。

 

第二十章