第九章

 

4-136:無茶〔14歳:LEVEL40〕
帝都が陥落してから、数日後―――。
俺が遊園地で遊んでた間に帝都が乗っ取られ、世界は闇に包まれたっぽい感じだ。
この俺としたことが迂闊だった…が、まぁ今さら嘆いても仕方ない。切り替えよう。
取られた物は取り返せばいいんだ。いや、むしろメジ大陸まで行く手間が省けた。
だが困ったことに、俺は秋まで動けない…。こうなったら、雑魚どもに任せる他ない。
〜タケブ大陸:ジュルーン村〜
勇者「というわけで、今からお前らを帝都に送り込もうと思う。異論は無いな?」
暗殺美「大アリさ!なんでこんな戦力で敵の根城に乗り込まなきゃなんないのさ!」
勇者「俺が決めたからだ。」
商南「どんだけ暴君やねん!?いくらなんでもウチら二人とかありえへんやろ!」
勇者「フッ、安心しろ。今ごろ土男流が戦仕、宿敵、賢二を捜し…うん、無茶だな。」

無茶だな…。
無茶だった。

 

4-137:潜入〔14歳:LEVEL40〕
その後、嫌がる二人を言いくるめ、俺達は帝城を制圧すべく帝都へ向かった。
〜帝都チュシン:城下町〜
暗殺美「…で、なんなのさこのカッコ?アンタ私らに何をさせる気かさ…?」
勇者「フン、バカか貴様?敵地に乗り込むとなれば変装は基本だろ?」
暗殺美「自由に変身できる今のアンタと一緒にすんなさ!こっちは一苦労なのさ!」
商南「ちゅーかなんでメイド服やねん?アンタこんなんが趣味なんか?」
勇者「フッ、見事なまでに意味は無い。」
商南「やろな…。 んで?どないすんの?どーやって潜入する気やねん?」
勇者「潜入?そんなまどろっこしいマネはせん。ズバリ、正面突破だ!」
暗&商「え゛ぇっ!?」
ちなみに勇者もメイド服だ。

 

4-138:目的〔14歳:LEVEL40〕
フリル満載のメイド服に身を包み、颯爽と帝城に乗り込んだ俺達。当然捕まった。
〜帝牢〜
看守「ったく…いいか貴様ら、大人しくしてろよ。すぐに上の人間を呼んでくる。」
ガチャッ(閉)
暗殺美「…さて、これからどうする気なのか言うがいいさ勇者。何が目的なのさ?」
勇者「フッ、大誤算だ。」
商南「えぇっ!?いやいやいや!無策でこの状況作り出したゆーんかいアホか!」
勇者「…前に俺に一杯食わせやがった奴が、ここに収監されてると聞いてなぁ。」
暗殺美「なっ!?じゃ、じゃあそいつを仲間に引き入れようみたいな作戦で…!?」
勇者「さぁ出て来いよ、そこにいるんだろう?」

Y窃「…え?」
ガッカリな展開だった。

 

4-139:変態〔14歳:LEVEL40〕
暗黒神戦の時に宇宙船を奪って逃げた変態野郎…噂通り奴は、牢の中にいた。
Y窃「え、えっと…誰だっけキミ?俺に何か用…?」
勇者「フン、忘れたとは言わさんぞ?貴様のせいであの時は散々な目に遭った。」
商南「へ…?アンタまさか、コイツに恨みを晴らしたいからってだけで…?」
勇者「一発ブン殴る!!」
暗殺美「アホかさ!確かにコイツがいなきゃ先生死ななかったけど、今じゃないさ!」
勇者「ところで貴様…職業は何だ?まぁ前に賢二から聞いてはいるんだが。」
Y窃「え?普通に「変態」だよ?」
商南「いや、どこが普通やねん!?その驚きの表情にこっちが驚いたわ!」
勇者「まぁ落ち着け雑魚ども。コイツには貴様らの知らん、可能性があるんだ。」
暗殺美「どう考えても「危険性」しかないさ。この顔に可能なことは漏れなく犯罪さ。」
勇者「その昔、聞いたことがあるんだ。成長し姿を変える…そんな職があるとな。」
商南「はぁ?変態ごときにそんな…って、ハッ!まさか意味が…!?」
勇者「そう。それはまるで蝶のごとく、“変態する能力者”…それが、貴様だ!!」

Y窃「え…違うけど?」

ザシュッ!(斬)
勇者に代わって暗殺美がいった。

 

4-140:脱獄〔14歳:LEVEL40〕
使える奴を手に入れる予定だったんだが、俺の読みは凄まじく外れていた。
この二人だけじゃ心もとないと思うんだが…もうこの際仕方ない。次へと進むか。
勇者「というわけで、俺は鉄格子をスリ抜けて普通に帰ろうと思う。」
暗殺美「帰んなや!この状況で仲間見捨てて逃げるとか頭イカれてんのかさ!?」
勇者「フッ、いたって平常心だが?」
商南「確かにいつも通りやけども!容易に予想できたけども!」
勇者「予想だぁ?ならば貴様、俺がこのためだけに捕まったとは思っちゃいまい?」
商南「な、なんやねん?なんか他にある言うんか?」
勇者「当然だろ?脱獄した上に先手を打つ、とっておきのアイデアを考えてやる!」
商南「って今からかい!そんなんで抜け出せるんやったら苦労無いわボケェ!」
暗殺美「そうさ!世界一の牢からそう簡単に脱獄できたらそれはそれでダメさ!」
勇者「まぁ貴様らはのんびり死を待つがいい。暇なら壁のシミでも数えてろ。」
暗殺美「誰が数えるかさ!こんな薄気味悪いとこの壁、見るだけで吐き気が…」

壁『新星歴523年 祝!初脱獄記念(トンネル)☆』

三人「え゛ぇっ!?」
父の功績だった。

 

4-141:興味〔14歳:LEVEL40〕
なんと、牢獄の隅の壁に、かつて誰かが開けたと見られる抜け穴を発見した。
いくら隠してあったとはいえ、この落書きに気づかんとは…看守は全員アホなのか?
〜帝牢:抜け穴内〜
商南「ゆ、勇者?絶っっ対に前見たらアカンで?四つん這いなんやから前見たら…」
勇者「フン、安心しろ。誰も貴様のクソの付いた縞パンなんぞに興味は無い。」
商南「付いとらへんわっ!! って、なんで縞パン限定やねん!?見たなーー!!」
暗殺美「というかアンタはスリ抜けられるんだから四つん這いする必要は無いのさ。」
勇者「まぁ気分の問題だ。 …お?なんか明かりが見えるぞ、出口は近そうだな。」
商南「あ、チョイ待ち! あんな、この際やし…その…お宝探し、していかへん?」
暗殺美「アンタまたそんなこと言うのかさ?前の失敗で懲り…」
勇者「ほぉ、宝か…興味深いな。」

「勇者」の腕が鳴るぜ。
鳴らすな。

 

4-142:入室〔14歳:LEVEL40〕
城へ乗り込む前に、商南の提案で宝探しに行くことになった俺達。
変態が期待外れだっただけに、強い武器でも手に入れないと割に合わん。
〜帝牢:最下層〜
商南「ハァ、ハァ、多分この部屋やな…お宝のニオイがプンプンするでぇ♪」
勇者「ふむ。確かにそうだがしかし、大体この手のパターンだと…」
ウォーーン!ウォーーン!(警報)
勇者「ま、こうなるわなぁ。」
暗殺美「だ、だから言わんこっちゃ無いのさ!さっさと逃げてりゃこんなことには…」
カチャッ(扉)
商南「開いたで☆」
暗殺美「聞けやっ!!」
勇者「まぁここまで来て成果無しもアホだろ、とりあえず取るものは取って去るぞ。」
三人は部屋に入った。
オロチ「…お?」
三人「おおぉっ!?」
お宝どころじゃなかった。

 

4-143:無視〔14歳:LEVEL40〕
帝牢最下層には、いかにもって感じの怪しい扉があったので当然入った。
すると部屋の中には、妙な本が鎖に縛られて置いてあった。これが噂のお宝か?
勇者「むぅ、なんだこの本は?「魔契約教本」…授業で習った気がせんでもないな。」
暗殺美「まさか「拷問大全集」、「列島破壊書」と並ぶ「三大魔本」の一つの…!?」
商南「が、ガッカリやわ…。お宝どころか、「封印されし呪物」やったなんて…。」
勇者「ふむ、ワクワクが止まらないな。」
商南「とりあえず持っといて、後でアンタにごっつ高い値段で売りつけたるわ…。」
暗殺美「まったくとんだ無駄足さ。さ、もう用は無いからこんなとこさっさと逃げるさ。」
オロチ「ま、まさかここまで徹底的に無視されようとは…。」
暗殺美「…チッ、なんでアンタがここにいんのさ?アンタもお宝目当てかさ?」
オロチ「似た者を捕らえたと聞いた。なんとなく、ここにいれば会える気がしてな。」
勇者「オイ暗殺美、誰だこの男は?貴様のファンか何かか?」
暗殺美「もはやストーカーと言ってもいいさ。」
オロチ「ち、違う!それに僕は女だ!」
勇者「ハッハッハ!面白い冗談だ。」
オロチ「殺すっ…!!」
勇者「ほぉ、いいだろう…かかって来い!!」
頑張れ暗殺美と商南。

 

4-144:全開〔14歳:LEVEL40〕
暗殺美の話によると、部屋にいたのはオロチという、「十字架」の一員らしい。
こんな所で会うとは少々計算外だが、どのみち狩らねばならぬ敵だ、やってしまえ。
勇者「さぁいけぃお前達!その安い命と引き換えに、敵を討ち取るのだ!」
暗殺美「偉そうに言うなさこの役立たずめ!戦えないならせめて黙ってろさ!」
商南「で、結局なんやねんコイツ?なんやアンタら深い因縁でもあるん?」
オロチ「この前は邪魔が入った。いや本当に…本当に邪魔が…ふぉおおおっ…!」
暗殺美「何かよっぽどのことがあったと見たさ。敵ながら同情するさ。」
オロチ「今度は誰の邪魔も入らぬうちに終わらせよう。パジリスキュ、「装備化」!」
オロチは「蛇王の鎧」を装備した。
暗殺美「私も今回は最初から、「風神の靴」のパワー全開でいくさ!」
商南「ほなウチは術符で援護を!」
勇者「ならば俺はとっておきのポーズを!」
暗&商「失せろやっ!!」
勇者は渋々立ち去った。

 

4-145:待合〔14歳:LEVEL40〕
暗殺美と商南を帝牢に残し、俺は帝城近くのとある場所へと向かった。
味方を集められたら、集合しろと土男流に言っといた酒場…仕方なくそこで待とう。
〜酒場〜
勇者「おいマスター、悪いがしばらく時間、もしくは店を潰させてもら…」
土男流「あっ!遅いんだ師匠ー!とっても待たされたんだー!」
戦仕「さぁ、とっとと行こうぜよ勇者。盗子サンの城を、取り戻すんだろ?」
宿敵「僕も覚悟を決めてきた。今度こそは、役に立ってみせるよ。」

…おや?
何事も無く勢ぞろいだった。

 

4-146:満々〔14歳:LEVEL40〕
まだまだかかると思っていたのだが、既に集まっていた土男流ら3人。
こんなことなら最初っからここに…。暗殺美に商南…おかしい奴らを亡くしたぜ。
勇者「さて、じゃあ行くか…の前に、まずは敵地の情報を探る必要があるな。」
土男流「情報なら仕入れてあるぜ!もう「十字架」も大半が城に来てるんだー!」
勇者「あ、ありがたいが土男流、お前「人形師」はどうした。本職を見失うなよオイ。」
宿敵「さぁ早く行こうか。僕には倒すべき因縁の敵がいるしね。今度こそ決着を…!」
勇者「黙れ引き分け要員。」
戦仕「オイラにも…お師さんのカタキがいるぜよ。ぜってーオイラが、ブッ飛ばす!」
土男流「私にもとっておきの秘策があるんだー!師匠もきっとビックリするぜー!」
勇者「なんだなんだ、みんなしてヤル気マンマンじゃないか。ウザッ。」
土男流「まさかのリアクションに先に私がビックリしたんだー!」
勇者「フン…まぁいい、ほざいたからには結果を出せよ貴様ら?命懸けでなっ!」
三人「オウッ!!」

だが、一番目立つのは俺だ。
勇者は目指す場所がおかしい。

 

4-147:陽動〔14歳:LEVEL40〕
すっかりヤル気な3人と共に、俺は改めて帝城へと乗り込むことにした。
もちろん今回も正面突破だ。最終決戦にコソコソするなんて興ざめだしな。
〜帝城:城門〜
勇者「さーて行くぞ…さぁ〜てぇ!行くぞぉおおおおおあああああ!!」
宿敵「ちょっ、待ってくれ勇者君!なぜわざわざ敵を誘うようなマネを!?」
勇者「フッ、陽動作戦だ。」
宿敵「いや、それは本隊が別にいたらの話だよね!?状況が違うよね!?」
勇者「だが敵は…そうは思わんだろうなぁ。」
土男流「うぉー!さすがなんだ師匠ー!まずは心理戦とかなんかカッコいいぜー!」
勇者「フッ、ただの嫌がらせとは今さら言い出しづらい雰囲気だぜ。」
戦仕「まぁいいぜよ、どーせ最終的には全員ブッ飛ばさなきゃなんねぇわけだしな。」
兵士A「不審者が来たぞー!敵襲だー!」
兵士B「衛兵、集えぇーー!!」
戦仕「ま、とりあえずここは任せろよ。オイラは後から駆けつけ…って、いない!?」
戦仕は陽動に使われた。

 

4-148:宿命〔14歳:LEVEL40〕
戦仕を城の外に残し、俺は城の中に乗り込んだ。先のことは考えたら負けだ。
〜帝城1階:守りの広間〜
タッタッタ…(走)
勇者「チッ、戦仕をつれてくるつもりが、まさか使えんお前らが来やがるとはな。」
宿敵「もう足止め要員なんてゴメンなんでね。今回は貪欲に、勝ちを目指すんだ!」
勇者「いや、もう少し冷静に考えろ。自分のアイデンティティを破壊してどするんだ。」
土男流「私はもう師匠と離れないって決めたんだー!師匠の養分で育つんだー!」
勇者「お前は冬虫夏草か何かか。」
宿敵「おっと、そうこうしているうちに…来たようだよ、僕の宿命の相手がね。」
太陽神「…やれやれ、またお前さんかね。参ったわな。」
太陽神が現れた。
太陽神「このくだらん因縁も、ここらで幕としようかね。」
宿敵「勇者君、ここは任せてもらうよ。僕は後から駆けつけ…って、いない!?」
宿敵はちょっとシュンとした。

 

4-149:般若〔14歳:LEVEL40〕
今度は宿敵を残し、更に上へ。確か帝城は地上30階…まだまだかかりそうだ。
〜帝城3階:歓談の間〜
勇者「やれやれ、残されたのがお前とはな…。俺が戦えん今、これ以上進んでも…」
土男流「だ、大丈夫なんだ!さっきも言ったけど私には奥の手があるんだー!」
勇者「フン、「人形師」風情の奥の手なんぞ知れている。希望もクソも無いな。」
土男流「今や色々呼び出せるんだぜ!前に仲良くなった「ロリータ・コング」とか!」
勇者「そこに希望は見出したくないな、人として。」
土男流「そして、中でも一番のオススメなのが…」
声「ちょぉ〜〜〜っと待ったぁーーー!!」
勇者「なっ!?ま、まさかそのウザ過ぎる声は…!!」

盗子「アタシを置いてこうとか、甘いんだかんねっ!!」
なんと!ウザいのが現れた。

勇者は般若の面を装備した。

 

4-150:油断〔14歳:LEVEL40〕
偉そうに現れたのは、なんと盗子だった。あまりのウザさにイライラが止まらない。
勇者「くっ、この状況で味方どころかゴミが現れるとは…!なんてことだ…!」
土男流「か、顔が鬼みたいなんだ師匠ー!せっかくの男前が台無しなんだー!」
勇者「フッ、そんなことはないぞ?ホラ、こんなに素敵に笑える。」
土男流「それは標的を見つけた猟奇殺人鬼の笑みなんだー!」
勇者「ったく、この状況で足手まといが増えるとか…。仕方ない一旦退くとするか。」
盗子「ギャーギャーうっさいよバカ勇者!ビビッてないで急げばいいんだよ!」
勇者「…なにぃ?ほぉ、いつになく好戦的じゃないか。新手のジョークかオイ…?」
盗子「バーカバーカ死ねっ!アンタなんか死んじゃえばいいんだよっ!」
勇者「て、テメェ…いい度胸だ貴様ぁ!!ブッ殺…」

バスンッ!!

土男流「わっ!?」
勇者「え……?」
葉沙香「まぁ〜ずは、一人目ぇ〜♪」
盗子は首から上が無い。

 

第十章