第二章

 

4-31:二人〔14歳:LEVEL40〕
勢いに任せて魔獣に乗って飛び立った俺だったが、大事なことを忘れていた。寒い。
ぬぉおおおおっ!こ、この俺としたことが、なぜもっと厚着をしてこなかっ…死ぬ…!
という生と死の狭間をさまよっていたが、なんとかギリギリで目的地が見えてきた。
〜魔国:王都イラモ〜
盗子「おぉ〜、見えてきたね見えてきたねー!なんか…おぞましい形のお城が…。」
美風「これが「狂国:魔国」…。つい最近蘇ったとか超ウソくさい程の迫力ねコレ。」
栗子「ふふふふ震えが止まらんですよぉ〜!」
勇者「フフフフッ、おおお俺には敵わんだろうがなななっ!」
盗子「だ、大丈夫勇者!?なんか唇がありえない色になってるよ!?」
勇者「お前の方がありえない。」
盗子「なんでそんな時ばっか震え止まるの!?その気合いの入れ方はなに!?」
勇者「よよよよし行くぞお前ら!もももうすぐ城だ、ととと飛び移るぞっ!」
栗子「ととと飛び移るですか!?なななぜにそんな無茶な急ぎ方をば!?」
勇者「さささ寒いからだ!」
栗子「さささ寒いからですか!」
勇者「そそそそうだ!」
盗子「うるっさいよっ!!」
勇者「ぐぐぐっ、うぐぐぐ…(震)」
勇者はマナーモードかもしれない。

 

4-32:出逢〔14歳:LEVEL40〕
寒さのあまり一刻も早く屋内へと辿り着きたかった俺は、空から城へと飛び込んだ。
ガッシャーーン!
勇者「う…うぉおおおお!室内だー!あったかいぜチックショウ!ヒャッホーーィ!」
兵士A「だ、誰だ貴様らは!?ここが魔国城だと知っギャーーー!!
勇者「チッ、だが隙間風が酷いな…。まったくフザけた手抜き建築だぜ!」
兵士B「いや、そりゃお前が天窓ブチ破っギャーーー!!
勇者「フン、雑魚どもに興味は無い。絞死とかいうガキを差し出すがいい人間ども。」
盗子「え、なにその人外な感じのポジション!?」
絞死「フゥ〜、なんですか騒々しい?抜き打ちパーティーか何かですか?」
教師によく似た子が現れた。
勇者「ふむ、貴様が絞死だな?確かにあの先公に似た空気をまとっていやがる。」
絞死「先公…もしかして父をご存知の方で?」
勇者「全く知らん。」
絞死「そうですか、じゃあ死んでください。」
盗子「う、嘘だよ知ってるよ!?簡単には忘れられないくらいにっ!」
絞死「そうなんですか?じゃあ…死んでください。」
結局死んでください。

 

4-33:死闘〔14歳:LEVEL40〕
根暗な顔して思ったより好戦的な絞死。まぁどうせ始末する予定だったし好都合だ。
勇者「まぁ焦るなよクソガキ、自分を殺す相手の名くらい知っておいて損は無いぞ。」
絞死「アナタ方のことは知っていますよ。父の日記にあった通りですね、勇者さん?」
勇者「日記?意外だな…。なんだ、「学園校の蒼き閃光」とでも書いてあったか?」
絞死「困った生徒だと。」
盗子「じゃ、じゃあアタシは?盗子ちゃんについても何か書いてあったり…?」
絞死「盗子という子だけは知らないと。」
盗子「え、なんで名指しで否定!?それなんか矛盾してない!?」
絞死「みたいな扱いでいいと。」
盗子「そんな扱い代々伝承されても困るんだけど!?」
勇者「にしても先公…死を予期して色々と託したようだな。他にも何かあったろう?」
絞死「…いいえ?特に無いですよ。いいからもう死んでください。」
勇者「だってよ?」
盗子「なぜにこっち見る!?」
そして死闘が幕を―――
ガッシャーーン!
麗華「う…うぉおおおお!室内だー!あったか…む?」
開け損ねた。

 

4-34:撤退〔14歳:LEVEL40〕
さぁ戦うかーと思った矢先、なぜか麗華が降ってきやがった。一体何がどうなった?
勇者「なんだよ麗華、妙な所で会うじゃないか。貴様も城攻めか?」
麗華「むっ、なぜ貴様が…いや、それより凶死殿のご子息は?急ぎの用なのだ。」
絞死「私ですが何か?新聞、宗教、拷問器具なら間に合ってますが?」
盗子「最後のも間に合っちゃってるの!?」
麗華「おぉ、そう言われればよく似て…雑談は後だ、とにかく急ぎこの地を離れよ。」
勇者「オイちょっと待てよ。いきなりすぎて意味がわからん、ちゃんと説明を…」
麗華「お前達も急ぐがいい。我がしもべ「人獣奇兵団」も…そう長くはもつまい。」
ガッシャーーン!
団長「ハァ、ハァ、す、すまねぇ姐さん…もう…限界みたい…だわ……。」
絞死「なぜみなさん天窓を割って…」
麗華「強敵!オイ強敵…!チッ、マズいな…仕方ない備えろ!来るぞ、“奴”がっ!」
ガッシャーーン!

大魔王「おじゃましまーす。」
ノリにズレが。

 

4-35:吐気〔14歳:LEVEL40〕
妙に軽いノリで、わけのわからんガキが入ってきた。だがコイツ…恐らく凄く強い。
大魔王「鬼ごっこは終わりだよ。あ、それとも次はおネェさんが鬼やっちゃう?」
勇者「いや、コイツは元から鬼だぶっ!
麗華「お前は下がっていろ勇者!コイツはただの小僧じゃない、この小僧は…!」
勇者「おい貴様!いきなり入ってきて俺に挨拶が無いとは生意気だぞ、コラァ!!」
ズガァーーン!!(殴)
盗子が華麗に宙を舞った。
盗子「な゛ん…でっ…!?
勇者「意外性を追求してみた。」
麗華「ちょっ、勇者…!お前の行動はなぜいつもそんなに型破りなんだ!」
大魔王「…へぇ、僕の先を越すとかヤルじゃんキミ。大事なお仲間なのかな?」
麗華「なっ…!?」
勇者「違ぇよ、無性に殴りたくなっただけだ。 コイツが大事?フン、吐き気がする。」
大魔王「じゃあ止めてあげようかその吐き気?息の根ごと…だけどね。」
勇者「フッ…面白い冗談だ。」
勇者はボコボコにされた。

 

4-36:心折〔14歳:LEVEL40〕
予想はしていたが敵はそれよりも遥かに強く、俺は為すすべもなくブチのめされた。
そういや「マオ」も「死神の目」も失い、俺の魔力は空っぽだったっけ…。マズいな。
勇者「というわけで、俺は「逃げるが勝ち」の方程式から大勝利を導き出そうかと…」
麗華「いいから黙って去れ。こやつは…お前ごときの手に負える相手じゃない。」
大魔王「おっと、困るよおネェさん。僕のことをそうペラペラ話されちゃうとさぁ。」
麗華「話すことでこの小僧も標的に…となるのならば話すまい。ワシだけを殺せ。」
勇者「寝ぼけるな麗華。コイツは真っ先に弱者(盗子)を狙った。交渉は無意味だ。」
大魔王「アハハ…ご名答。よくわかってるじゃんキミ、僕の部下にならない?」
勇者「貴様も寝ぼけるな。たとえ貴様が誰であろうと、悪に屈する気は毛頭無い。」
麗華「ふむ…やれやれ、戦う前から心折れるとは…ワシとしたことが情けない。」
勇者「目が覚めたか?ならやるぞクソ師匠、不満はあるが仕方なく協力してやる。」
麗華「だが心してかかれよ?敵は「大魔王:救世主」…理慈殿をも、葬った悪鬼だ。」

勝てっこねぇ。
勇者は心が折れた。

 

4-37:名乗〔14歳:LEVEL40〕
麗華から聞かされた衝撃の真実。なんとこの小僧が古き伝説の「救世主」らしい。
だが救世主といえば、かつて「勇者」だったはずの男…それが「大魔王」だと…?
麗華「いくぞ勇者、左右から挟み撃ちにする。ワシは右、お前は左、いいな?」
勇者「イヤだ俺は右がいい。」
麗華「ダダをこねるなこの状況で!チッ…もう右でいいからとにかくいくぞっ!?」
大魔王「まる聞こえだけどね。」
麗華「なんてこったー!」
ズッゴォーーーン!!(殴)
絞死が大魔王をブン殴った。
絞死「私のことをお忘れでは?いや、名乗ってませんでしたか…じゃあいいです。」
大魔王「ぐっ…ふぅ、ゴメンね忘れてたよ。悪いけど自己紹介してもらっていい?」
勇者「勇者だ。」
大魔王「いや、キミじゃなしに。」
麗華「ワシか!?れ、麗華だ。本名だぞ!?」
大魔王「聞いてないし。」
絞死「私はどうすれば。」
絞死は名乗りづらい。

 

4-38:格違〔14歳:LEVEL40〕
どうやらそこそこ戦えそうな絞死。これでまた勝ちの目が増えた。なんとかなるかも。
勇者「というわけで、いい加減やろうか。室内とはいえこの国は俺には寒すぎる。」
大魔王「オッケー。じゃ、さっさと殺してあげるよ。ハァアアアアアッ!!」
大魔王の連続攻撃!
なんと!4人の絞死が全て防いだ。
絞死「フゥ…なかなか重い拳ですね。防御に回ると苦労しそうです。」
勇者「なっ、貴様も「幻魔導士」か…!? だが今のは全て実体だったような…。」
大魔王「幻の体「幻体(げんたい)」をもって敵を討つ、「幻魔闘士」か…やるねぇ。」
絞死「いつか父をタコ殴りにしたくて覚えたんですけどね。無駄骨でした。」
勇者「どうやらお前とはうまい酒が飲めそうだ。」
大魔王「ハァ〜…でも残念、惜しいけど無理だなぁキミたちじゃ…ワクワクしないよ。」
麗華「ワクワク…だとぉ?くっ、このワシもナメられたものだ…!」
大魔王「ま、すぐにわかるよ。格の違いってやつを…教えてあげるね。」
絞死「お断りします。」
麗華「ああ、右に同じだな。」
勇者「いいや、俺が右だ。」
右に一体何が。

 

4-39:空気〔14歳:LEVEL40〕
バトルが開始して、数十分が経過。だが事態は俺が想像した以上に深刻だった。
絞死「ハァ、ハァ…参りましたね…こんなに打ち込んで、一発も当たらな…ぐふっ!
大魔王「そんなんじゃ何発当てても効かないけどね。いくら増えても力が弱いし。」
麗華「なんたることだ…走り疲れているとはいえ、まさかこれほどの差が…ガハッ!
大魔王「ん〜、片腕じゃなきゃもうちょっと楽しめたのにね〜。とっても残念だよ。」
勇者「さぁ見るがいい!この俺の脚線美を!ぎゃふっ!!
大魔王「キミはもっと真面目にやるべきだと思う。」
勇者「フッ、完敗だな…。いいだろう、殺せ。貴様相手なら盗子も本望だろう。」
麗華「いや、なぜその流れで平然と他人に持っていけるんだお前は!?」
大魔王「いや〜もうちょっと待つよ。待ち合わせの時間には、早いみたいだしねぇ。」

〜その頃、地下牢では…〜
賢二「み、美風さん!?ねぇ美風さん返事してっ!ねぇ…!?」
美風「・・・・・・・・。」
返事が無い。ただの屍のようだ。
栗子「に…にに逃げてください…先輩…。う、上に、行けば、ゆゆ勇者先輩…が…。」
賢二「喋っちゃダメだよ、血が…!」
栗子「いえ、き、聞い…あ、せ、先輩…あの…わた、すす…すすすす……(ガクッ)」
賢二「く、栗子さん!?何!?いつも以上に何っ!?うわぁああああああああ!!」

女「ったく、ダリィな〜。この「葉沙香(はさか)」様を呼ぶかぁ?こんな所までよぉ!」
上とは空気が違った。

 

4-40:殺意〔14歳:LEVEL40〕
大魔王の強さは圧倒的で、3人がかりでも相手にならん。コイツ本当に人間か?
しかもなにやら誰かを待っているらしい。さらに敵が増えるとなるともう絶望的だ。
勇者「オイ貴様、待ち合わせとはどういう意味だ?冥途の土産に聞いてやる。」
大魔王「あ〜、召集かけたんだよ。全国でスカウトした10人…僕の右腕達にね。」
勇者「な、なんてバランスの悪い体なんだ…!」
大魔王「いや、比喩的な意味で。」
勇者「フン!貴様の右腕となる程の者が、10人もいるだとぉ?バカなこと言うな。」
麗華「通称「十字架」…ワシはその脅威を皆に伝えるため、急ぎ逃げてきたのだ。」
絞死「ところでみなさん、ここへ来たのは私に何か用でも?」
大魔王「最初は港町集合だったんだけど、おネェさんがこっちに向かったもんでさ。」
麗華「わ、ワシのせいだったのか!?なんたる不覚…!」
絞死「次は裁判でお会いしましょう。」
勇者「俺は貴様に用が…ん?あぁそういや賢二も来てると思うんだが、どこだ?」
麗華「賢二が!?あの虫も殺せぬ優しい子が…無理だ、あの子に戦いは向かん!」
ドゴォオオオオオオオン!(壊)
床を突き破って何かが来た。
葉沙香「キャハハハ!ほ〜らここまで来てみろやクソガキィ〜!?遅ぇぞ〜!?」
賢二「許さない…絶対許さない!こ…こ…殺すっ!!」

麗華「Σ( ̄□ ̄;)!?」
麗華は石になった。

 

4-41:全員〔14歳:LEVEL40〕
いきなり地下から妙な女と現れた賢二は、なにやらいつになく殺気立っていた。
賢二「勇者君…。美風さんが…栗子さんが…!僕は…とっても怒ってるんだよ!」
勇者「なるほどな、状況は察した。貴様がそんなになる程の惨劇があったんだな。」
大魔王「キミが「狂戦士(バーサーカー)」…7600銀の賞金首、葉沙香だね?」
葉沙香「はぁ?じゃあテメェが大魔王だってのかぁ?オイオイこんなガキが…。」
大魔王「人を見かけで判断すると早死にするよ?」
葉沙香「…ま、好きに暴れられるんならボスは誰だっていいけどねぇ。ヨロシクな。」
勇者「うむ、ヨロシク頼む。」
麗華「いや、貴様はどちら側なんだ。何をどうヨロシク頼む気だ。」
葉沙香「で?俺はどうすりゃいいんだよ?コイツら全員殺していいか?」
大魔王「あ〜、しばらくのんびりしててよ。たまには動かないと勘が鈍るからさぁ。」
勇者「フッ、甘いな。3人じゃ敵わなかったが今は賢二も増えて4人…大差は無い。」
賢二「え!なんか話の前後が噛み合ってなくない!?」
大魔王「いいから全員でかかっておいでよ、殺してあげるから。5人まとめてね。」

盗子「Σ( ̄□ ̄;)!!」
盗子の寝たフリはバレてた。

 

4-42:過去〔14歳:LEVEL40〕
知らぬ間に盗子も起きていて、こちらは5人…だがまぁ戦力的には足しにもならん。
案の定戦況は好転せず、もはや死ぬか逃げるかしか後は無い感じになってきた。
勇者「ゼェ、ゼェ、化け物め…!何発か当ててるのに効いてるように見えん…!」
大魔王「いや〜さすがに少し疲れてきたよ。そろそろ遊びも終わりにしていい?」
勇者「フッ、だが甘いな。こういう時ほど味方が現れる…それが世界のお約束!」
ガッシャーーン!(天窓)
絞死「なんかもう…あそこを正門に変えたい気分に…。」
男「おっと、少々早いかと思ったガ…どうやらそうでもなかったらしいネ、救世主。」
竜を模した甲冑の男が現れた。
大魔王「あ〜、久しぶりだね「竜神:ウザン」。しばらく見なかったけどどこへ?」
勇者「まさか敵が増えるとは。」
麗華「りゅ、竜神…!?チッ…先の大戦の折、既に懐柔しておったのか外道め…!」
竜神「すまんネ大将。我が父、「魔竜:ウザキ」を倒した少年…その噂を辿ってたヨ。」
賢二「Σ( ̄□ ̄;)!?」
大魔王「あ〜、確か僕の故郷の惑星「サマラ」も…同じ子が潰したとか聞いたなぁ。」
賢二「Σ( ̄□ ̄;)!!?」
勇者「ん?どうした賢二、そんなに震えて…寒さに耐えられんのか?情けない。」
麗華「貴様が言うな貴様が。でも、ホントにどうしたの賢二君?何かあったの…?」
賢二「え、いや…僕は何も…ホントに…。」

 

4-43:秘策〔14歳:LEVEL40〕
敵が更に増え、更に困った感じになってきた。なんだ、ホントに死ねというのか。
だがこの状況にきて、ある一つの名案が浮かんだ。この方法なら、あるいは…!
勇者「フゥ〜…オイ麗華よ、貴様その片腕でも「千の秘剣」は放てるか?」
麗華「む?ふむ、なんとかいけそうではあるが…なんだ、何か秘策でもあるのか?」
勇者「ああ。俺と貴様の千…掛け合わせた秘剣、名は「八百万(やおよろず)」。」
盗子「え!その「八」はどっから出てきたの!?確かにその方がカッコいいけども!」
麗華「八百万か…悪くない名だな。いいだろう、貴様の策に乗ってやる。」
勇者「おっと、だがその前に一つ。貴様、俺の性格はわかっているな?」
麗華「…フッ、何年貴様の師をやってると思っている?意外と長い付き合いだぞ。」
大魔王「最後のあがきの準備はオッケー?これ以上は待てないよ〜?」
麗華「ああもう十分だ。 いくぞ大魔王!食らえ、刀神流操剣術―――」
勇者「―――即興奥義!八・百・万!!」


葉沙香「なっ!?ぐぁあああああああああああああ!!?
勇者らしい攻撃。

 

4-44:作戦〔14歳:LEVEL40〕
意表を突いて一人を撃破。まだ息はあるようだが、トドメを刺してる余裕は無い。
勇者「まずは部下どもを先に無効化する!「急いては事を仕損じる」だ!」
盗子「いや、「急がば回れ」じゃなしに!?」
竜神「チッ…まさかそうくるとはネ、驚いたヨ。でもそっちがそうくるなら…」
勇者「そうはさせるかよ!今だ賢二、見せ場だぞっ!」
賢二「…な時の中で、夏までには絶対痩せてやるんだからねっ!〔超絶重力〕!」
竜神「ぬぐぅ!?う、動けない…ネ…!」
大魔王「やれやれ…やられたね。まさか周りから潰してくるとは思わなかったよ。」
賢二「ご、ゴメン勇者君!中心の人以外は、完璧には止められないみたい…!」
勇者「賢二にしては十分だ、良くやった!あとは俺と麗華に任せろ!」
麗華「ああ、ここまできたら道は一つ!」
大魔王「…不愉快だよね、とっても…不愉快だよねぇ、こういうの…!!」
大魔王から尋常じゃないオーラが噴き出した。
麗華「逃げるぞ!」
勇者「うむ!!」
結局逃げます。

 

4-45:覚悟〔14歳:LEVEL40〕
ついに怒ったらしい大魔王。そのオーラはとんでもなく、逃げるに値する強大さだ。
勇者「仕方ない…俺と麗華で時間を稼ぐ、お前らは先に逃げるがいい雑魚ども。」
麗華「…いや、残るのはワシ一人だ。ワシを置いて皆で逃げなさい。」
賢二「えっ!?で、でもそれじゃ…麗華さんは…?」
勇者「敵の力が読めん貴様じゃないだろう?調子に乗るな、ここは俺と二人で…」
麗華「この十字傷はな…自分で刻んだのだ。「二人の自分」と、決別するために。」
勇者「ん、なんだいきなり? 二人の自分…どういう意味だ?」
麗華「剣に生きると決めた日、ワシは捨てた。「乙女の自分」と…「姉の自分」をな。」
勇者「いや、どっちも今でも未練タラタラじゃないか。全然決別できてないぞオイ。」
麗華「そうだ賢二君…いや、賢二よ。聞けば貴様は…あの「賢一」の弟らしいな。」
賢二「えっ!知ってるんですか賢一姉さんを!?ね、姉さんは今どこで何を…!?」
麗華「うむ…。ずっとずっと遠くの国で…好いた男と、幸せに暮らしておったよ。」
賢二「そ、そうなんですか!?よ、良かったぁ…生きてたんだぁ〜…☆」
麗華「伝言も預かった。この戦いを無事終えたら共に…共に茶でも飲もうと、な。」
勇者「ま、待て麗華!今のは近来稀に見る見事な死亡フラグ…!」
麗華「麗しき華は、散り際こそが美しい。まるでそのために…咲いたかのようにな。」
麗華は死ぬ気マンマンだ。

 

第三章