第二十一章

 

3-316:躊躇〔13歳:LEVEL33〕
海竜に乗って走ること小一時間。俺達はやっとこさ懐かしのカクリ島に到着した。
だが港は焼け野原状態で事態の深刻さをうかがわせた。こりゃあ結構ヤバそうだ。
勇者「ふぅ全滅かよ…。敵の強さや規模は知らんが、まったく情け無い島民どもめ。」
姫「でも時期だからしょうがないよね。」
勇者「いや、「冬眠」とは違うんだ姫ちゃん。状況的にはむしろ「永眠」の方だしな。」
奮虎「お、オイ勇者!生き残りがいるべ!息のある島民がいるっぺよ!」
勇者「なにぃ!?チッ、なんてツメの甘い奴らなんだ!」
奮虎「ってオイオイ、オメェどっちの味方だ!?」
島民「ぐふっ…お…?おぉ勇者ちゃんか…大きくなったな…。」
勇者「む?なんだオッサン、この俺を知ってるのか?死にかけの分際で生意気な。」
島民「フフッ…この島で、お前さんを知らん奴ぁいないさ。なんたって親が…なぁ?」
勇者「どっちの親を指してるかによって意味が凄まじく変わってくるがな。」
島民「行くなら…学校だ…。大群が向かった…校舎の結界も、長くはもつまい…。」
勇者「…そうか。チョイ役ご苦労、安らかに眠れ(ドスッ!)。 よし、行くぞみんな。」
奮虎「ちょっ、えぇっ!?何のためらいもなく!?」
勇者「フッ当然だろ、逃げてどうする?悪に臆して…何が「勇者」だっ!」
そっちの話じゃなかった。

 

3-317:遭遇〔13歳:LEVEL33〕
故・島民の助言通り、俺達は学校へ向かい走…るのは疲れるのでのんびり歩いた。
すると途中で、どっかで見たような宇宙船的なモノの残骸を発見した。なんだコレ?
勇者「…と、凡人なら気になるとこだが急いでいるので華麗にスルー。」
奮虎「その割に落ち着きすぎでねぇか!?も少しパニックになってもいいくれぇだ!」
姫「勇者君、そこシート敷いて。」
奮虎「いや、ピクニックはしねぇでいいだ!」
勇者「騒ぐな奮虎、誰かいる…。状況的に敵の可能性も高いぞ。」
観理「う゛っ、うぅん…酷い目に遭ったれすぅ〜…。」
瓦礫の隙間から観理が現れた。
奮虎「ゆ、油断すんじゃねぇべよ勇者?娘っこだからって弱ぇとは限らねぇべ。」
勇者「フッ、安心しろ。俺は女だろうとグーで殴れる油断無き男だ。」
奮虎「それは違った意味で安心しづれぇけんども…まぁもうこの際諦めるべ。」
勇者「さぁ小娘、名を名乗れ。もしくはほっぺにグーパンチだ。」
観理「むっ、アンタこそ何者れす?観理さん、見知らぬ人には秘密主義れすよ!?」
勇者「OK観理、頬を出そうか。」
観理「バレちゃってる!?って、ならなぜ頬を!?冗談きっついれす!」
決して冗談ではなかった。

 

3-318:三人〔13歳:LEVEL33〕
学校手前で出会った小娘は、聞けば新桃錬邪らしい。まったくなにが秘密主義だ。
観理「…てなわけれすよ。どう今のわっかりやすい説明?参っちゃったかぃ!」
勇者「つまり貴様は何も知らんと。」
観理「そーとも言っちゃう。」
勇者「やれやれ…。ったく、仲間に会えんどころか妙な奴に会っちまうとはな。」
奮虎「あぁ、そーいやホレ、あの犬っころみてぇなのはどうしただ?来てねぇだか?」
勇者「賢二のことか?アイツはさらわれたよ、まぁまだ無様に生きてるだろうがな。」
観理「ケンジ…もしや魔法士の人?じゃああのうっさい盗賊っ子ともお知り合い?」
勇者「なにっ、貴様賢二を知ってるのか!?まさかアイツもそこの船に乗って…!」
観理「うん…。けど墜落しちゃって気づいたら今れすよ。おっかない世の中れすわ。」
勇者「まったくだな。」
奮虎「オメェが一番おっかねぇだよ…。」
観理「で、どーなるれすか?結局観理さんは置いてけぼりっ子?」
勇者「…いや、連れてってやるよ。人質なりスパイなり使い道はありそうだしな。」
奮虎「それは本人に言うべき内容じゃねぇと…。」
観理「一緒に行くの?三人で?」
勇者「そう三人で…三人で?」

姫ちゃん…。
いつの間にかいなかった。

 

3-319:到着〔13歳:LEVEL33〕
いい加減ペースを上げないと知らぬ間に世界が滅んでそうなので急ぐことにした俺。
ついに懐かしの学園校に辿り着いたんだが、時すでに遅し…ってな状態に見えた。
ちなみに気づけばいなかった姫ちゃんに関しては、いつものことすぎてもう慣れた。
奮虎「う、うへぇ〜…こりゃ大惨事だっぺよ…。もう手遅れなんじゃねぇべか…?」
勇者「いや、校庭の荒れ具合に比べりゃ校舎は軽い。結界で随分凌いだと見える。」
観理「でも…なんちゅー酷いことを…。」
勇者「お前の仲間がな。」
奮虎「他人にゃ厳しんだなや…。」
観理「も、もうあんなの仲間じゃねぇれす!観理さんこう見えて暴力嫌いっ子さん!」
黄緑「へぇ…随分なこと言ってくれんじゃん。じゃあ今から敵ってことでOK?」
黄緑錬邪と愉快な仲間達が現れた。
勇者「ふむ、約100か…恐れるに足らんな。この程度でチビるんじゃないぞ奮虎?」
奮虎「フッ、そのセリフ…もうチョイ早く聞きたかったべ。」
美盗「…だ、ダメだ逃げな…。雑魚はともかく、あの黄緑の奴は…マズい…。」
勇者「む?貴様は盗子の…。もう虫の息じゃないか、ウザいからもう喋るな。」
黄緑「ヒャヒャッ!バカかお前ら?逃がすわけねーじゃん!この「墓夢」様がよぉ!」
勇者「ボム…だと?その名どこかで…。」
黄緑「おっと、知ってる奴がいやがったか?ったく有名人は困るぜ。そうさ俺こそが」

勇者「興味無い。」
黄緑「ブッ殺す!!」
勇者の先制攻撃!
墓夢は軽く傷ついた。

 

3-320:魔法〔13歳:LEVEL33〕
やっと学校に着いた俺の前に現れたのは、100の兵を引き連れた新・黄緑錬邪。
中身は「墓夢」とかいうどっかで聞いたような名だが、特に興味は無いので無視だ。
勇者「…といきたいとこだがそうもいくまい。いいだろう、この俺が相手してくれる。」
美盗「ま、待って…あんな奴の相手より盗子を…盗子を助けてやっとくれよ…!」
勇者「なにっ!?あの盗子がアレ以上どうにかなったってのか!?」
美盗「ぐふっ…や、奴らの仲間に中に連れていかれた。あのままじゃあの子は…!」
勇者「それは可哀相に。」
美盗「なにその我関せずな感じ!?」
勇者「ウザいから喋るなと言ったろ?次に喋ったら…俺はヤル時にはヤル男だぞ。」
黄緑「ヒャハッ、悪ぃがそんな時…もう来ねぇよ。死にさらせやぁあああああ!!」
奮虎「ゆ、勇者ぁ!足元に爆弾が…!」
観理「あっ、そうれす!アイツは爆弾大好き「爆弾魔」で…!」
美盗「危ない避け…!」
勇者「フンッ、そんなものが「勇者」に通じるかっ! 見よ光魔法、「卑劣分身」!!」
勇者は美盗を盾に使った。
ドガァアアン!!(爆)
美盗「ぐぁふっ!!
一同「えぇーーーーっ!?」
勇者はヤル男だった。

 

3-321:二度〔13歳:LEVEL33〕
咄嗟の機転のおかげで、俺は爆破を免れることができた。さすが俺、素晴らしい。
勇者「貴様…貴様よくも盗子の義母を…!俺は、許さんぞぉーー!!」
観理「ちょ、この人おかしいれす!自分の悪行を鮮やかに他人のせいに…怖っ!」
奮虎「いや、これが「普通」なのがコイツの怖ぇとこだっぺよ…。」
黄緑「ヘッ、どーでもいーねぇ!どのみち全員、ブッ殺すつもりだしなぁ!」
勇者「甘いわ雑魚が!貴様に攻撃の機会など、もう二度と無いっ!!」
勇者の一撃!

だが魔剣はまたポッキリ折れた。
勇者「なんですって!?」
奮虎「ど、どうしただその剣!?さっきから折れすぎでねぇか!?」
勇者「くぅっ、よくわからんがとりあえず…逃げるぞ奮虎!ってもういない、だと!?」
観理「すんげー逃げっぷりれしたわ…。」
黄緑「さぁいくぜぇ勇者小僧、盛大に砕け散れや。」
勇者「チッ、少々…マズいな。」
観理も何かやれ。

 

3-322:暴走〔13歳:LEVEL33〕
やってやろうと思ったら、またもやブチ折れやがった魔剣。一体何が起きてる…?
予想外の事態だが、こんなことで負けてやる俺じゃない。別の方法でいくのみだ。
黄緑「ヒャッヒャッヒャ!さぁオメェらやっちまえ、やっぱ俺が手ぇ出すまでもねぇや。」
兵士達「おぉおおおおおおお!!」
勇者「…フン、俺もナメられたものだな…。謎の秘奥義、「ドロップキックドロップ」!」
ズゴォオオオン!!
兵士達「ぐわぁああああ!!」
勇者「雑魚は消えて無くなれぇー!連続謎の秘奥義、「バックドロップキック」!!」
ドガァアアアアン!!
兵士「うぎゃあああああ!!」
黄緑「チッ、なんて小僧だ…!だがよぉ、これだけの爆弾相手なら、どうかなっ!?」
勇者「だが、投げられねば貴様も危なかろう?誘爆しやがれっ、〔爆裂殺〕!!」
観理「なんちゅー無茶をぉおおおおおっ…!!」

チュドオオオオオオオン!!(大爆発)
落ち着けバーサーカー。

 

3-323:彼女〔13歳:LEVEL33〕
勢いに任せ大暴れした結果、校庭は更なる地獄に姿を変えた。うむ、いい景色だ。
黄緑野郎は消し飛んだようだが、兵はまだ半分以上残っている。やれやれ面倒だ。
観理「ケホッ、コホッ!まったく酷い目に遭ったれ…ハッ!アンタ平気れすか!?」
勇者「うむ、とても晴れやかな気分だ。」
観理「それはそれで人として平気じゃないれすが何か!?」
勇者「今の衝撃で思い出したよ。奴はS級手配首、この程度で葬れたんなら安い…」
黄緑「ヒャハッ!甘ぇよ甘すぎだ!爆弾魔が自分の爆弾で死ぬかよぉおお!!」
勇者「マジかよ…って一体いくつ隠し持ってんだ!?マズい、さっきので足が…!」
黄緑「死にさらせぇええええええええ!!」
爆弾魔は大量の爆弾を投げつけた。

ミス!爆弾は全て空中で爆発した。
黄緑「なっ…ぬぁにぃいいいいいいいいい!?」
女医「あら、間に合ったようね。さすがにもうダメかと思っちゃったじゃないの。」
勇者「いたのか女医!今のは貴様ごときの仕業なのか!?」
女医「あら、私が戦闘タイプに見える?奥で負傷者を治療してただけよ、私はね。」
声「はぁ〜あ、まさかぁ〜こんな面倒に駆り出されるとはねぇ〜…。」
黄緑「い、今のはテメェがやりやがったのか!?どこの誰だよテメェ!?」
勇者「爆煙のせいでよくは見えんが、今の声はまさか…!」
女医「旧魔王軍にこの人ありと謳われた、伝説の「大鎌使い」…それが、彼女よ。」

義母「チョーだるいってゆーかぁ〜?」
「彼女」ではなかった。

 

3-324:校内〔13歳:LEVEL33〕
爆煙の中から現れたのはなんと、身の丈を超える大鎌を携えたカマハハだった。
あの親父といるくらいだからタダ者じゃないとは思っていたが…まさかこれほどとは。
色々問い詰めようとも考えたのだが、状況が状況なのでヤメた。今は奴に任せよう。
盗子はどうでもいいが、魔神に目覚められたら厄介…黄錬邪を探さねばならん。
タッタッタッ…(走)
観理「ど、どこへ行くれすか!?」
勇者「うるさいギャーギャー騒ぐな!黙って俺に、ついて来やがれ!」
観理「えっ、それプロポーズ!?一生添い遂げろ的な…!? オケーイ受けたぁ!」
勇者「勝手に受けるな!色々間違っててさすがの俺もどうしていいかわからんぞ!」
観理「ってチョイと待つれす!あっちの角から人の気配がコンニチハ!」
勇者「フン、気づいてるさ。姿を見せた瞬間に仕留めるぞ、さぁ出て来い雑魚がぁ!」
声「わーー!ちょちょちょっと待って!僕だよ僕!」
賢二が現れた。
ズゴンッ!(殴)
賢二「なんでっ!?
男に二言は無かった。

 

3-325:目的〔13歳:LEVEL33〕
校舎内で偶然再会した賢二。殴られた後の宙の舞い方からして、まず本物だろう。
賢二「いたたた…!痛いよ勇者君、なんで僕と認識したのに腕振り抜いたの…?」
勇者「いや、なんとなく。」
賢二「それで納得できちゃう自分が悲しいな…。慣れって怖いね…。」
観理「おわっちょ!あ、アンタは前のタライの人…!二度目もアンタれすよねぇ!?」
賢二「ゲッ…!ま、待って待って!今はそんな場合じゃ…!」
勇者「まぁ観理よ、こんな奴でも今や貴重な戦力…この際助け合おうじゃないか。」
賢二「さっき華麗にブン殴った人の発言とは思えないけどね!」
観理「ん〜…まぁいいれすけどね。観理さんオッパイ無いぶん懐は深いっすよ!」
勇者「ところで賢二、お前…一人なのか?」
観理「あっはっはー☆ オイオイお前さん、その歳で結婚なんてそんなバカにゃ。」
勇者「さっき即答でプロポーズ受けた身で何を言うか。」
賢二「えっ、プロポーズ!?」
観理「ハッ、そういえばっ!」
勇者「アホがうつるからもうお前ら黙っててくれ。」
賢二「あっ、そうだこんな場合じゃ…!盗子さんが…盗子さんが奴らに奥に…!」
勇者「チッ…!」

姫ちゃんはどこなんだ!
勇者は目的が違った。

 

3-326:目星〔13歳:LEVEL33〕
何か知ってるかと思われた賢二だったが、どうやら何も知らない模様。雑魚めが。
観理「んで、結局どうするおつもり?フラフラと気の向くままにダッシュれすか??」
勇者「フン、この俺がアテもなく走ってるとでも思ったか?大体目星はついている。」
賢二「あ、「極秘書庫」だよね?前に侵入騒動あったのってあの場所くらいだし…。」
勇者「フッ、甘いな雑魚め。ベビルが漁ったくらいだ、あそこじゃバレバレだろうが。」
賢二「そっか、あの場所なんだったらもっと早くに狙われてるか…。でもそれだと…」
勇者「あるだろ?俺達しか知らない…何を守ってるかもわからん…そんな場所が。」
観理「あっ…!」
勇者「NGワード、「いうえお」。」
観理「な、なぜバレたっ…!」
賢二「ん〜?そんな場所なんか…って、ハッ! ま、まままままさかっ…!!」

〜その頃〜
黄錬邪「いい子ね…。さぁ、通して…もらえますよね?」

番獣「く…くぅ〜ん☆」
賢二のトラウマ再び。

 

3-327:危惧〔13歳:LEVEL33〕
俺が怪しいと睨むのは、かつて賢二と迷い込んだ「秘密の部屋」。まず間違いない。
絶対何かあると思いつつ10年も放置したんだ、これで違うだなんて許されない。
勇者「つーわけだ、行くぞ賢二!部屋の方向は静かだ、まだ間に合うやもしれん!」
賢二「いやぁあああ!!い、イヤだよ絶対無理無理!食い散らかされちゃうよっ!」
勇者「安心しろ、骨も残させん。」
賢二「「食べ物」なら本望だけど「人」としてはイヤだよ!てゆーかまず助けてよ!」
観理「ちょいと質問ー!魔神さんの復活って、何か儀式的なのが必要だったり?」
賢二「あー、えっと…確か「血」が必要だとか聞いた気が…。」
勇者「…そう、血だ。そしてその状況で盗子がさらわれたとなると、もしかしたら…。」
賢二「と、盗子さんが危険だってこと!? でもなんで彼女が…何か理由でも…?」
勇者「そうかお前は知らなかったか。信じがたいが盗子は…「天帝」の娘なんだと。」
賢二「えぇっ!?じゃ、じゃあ「皇女」ってこと!?世界で一番高貴な血を引く…!」
勇者「肩書きだけはいっちょまえ…となると可能性は高い。奴が危険だ、急ぐぞ!」
賢二「う、うんっ!」

無事でいろよ、魔神…!
あくまでもそっちだった。

 

3-328:束間〔13歳:LEVEL33〕
そして、そんなこんなで秘密の部屋の辺りまでやってきた俺達。確かこの奥のはず。
勇者「…よく見ると複数の足跡が見えるな。チッ、どうやら先を越されたらしい。」
観理「えっ、もうここいられすか!?なんも見えない観理さんは裸の女王様!?」
勇者「見てろ雑魚が。こことそっちの床を踏みながら、壁を3×3回ノックすると…。」
コンコンコン、コンコンコン、コンコンコン…
なんと、壁に入力装置が現れた。
賢二「で、ここに9桁の暗証番号入れると扉が現れるんだよね?押さないけどね!」
勇者「ああ、入学初日に偶然見つけた時には驚いたぜ。」
観理「偶然見つけれるレベルじゃないと思うれすがそれは観理さんの気のせい?」
勇者「さぁ押すぞ。俺はモタモタするのと盗子が大嫌いなんでな。」
賢二「ちょ、ちょっと待ってよ勇者君!中にはあのペルペロスがいるんだよ!?」
勇者「前門のペルペロス、後門の俺…どちらを選ぶかは貴様の自由だ。」
観理「よく知らんれすがどっちも死にそうれすね…。」
賢二「お願いだよ!カッコ悪いけど、ホントにトラウマなんだ!僕は…無理だよ…!」
勇者「・・・・・・・・。」

勇者「よし、ちょっと待ったぞ。」
賢二「ちょっとぉおおお!!」
余命もあとちょっとだ。

 

3-329:咆哮〔13歳:LEVEL33〕
そして…約10年と時を経て、俺達は再び「秘密の部屋」へと足を踏み入れた。
あの時は先公に邪魔されて犬以外何も見ていない。今日はじっくり漁ってやろう。
ガチャッ(開)
勇者「ワーーン!!」
賢二「うわぁあああ!?なにいきなり煽ってるの!?信じらんないヤメてくれる!?」
勇者「って、誰もいないじゃないか。どうしたんだあの犬は?番犬失格だなぁオイ。」
観理「おっとぉー!ちょいと見るれすよ、あっちの扉の方っ!アレアレ!」
勇者は奥にある扉の方を見た。
なんと、紫色の血だまりがあった。
勇者「あの犬の血か?自分を傷つけ正気を取り戻す…例のよくあるパターンだな。」
賢二「じゃあペルペロスは奥に…つまりここにはいないってこと!?やったぁー!」
勇者「よし、奥に向かうぞ。」
賢二「だよね…。」
勇者「気を引き締めていけよ?ここから先…命の保証は無いと思え。」
むしろある方が少ない。

 

3-330:血溜〔13歳:LEVEL33〕
秘密の部屋奥の扉の先には、地下へと続く階段があった。まるで地獄の入り口だ。
この学校だけに中は迷路かもしれんが、まぁペルペロスの血が導いてくれるだろう。
勇者「ふぅ、だいぶ歩いたな…もうじき底か。どうだ賢二、ワクワクしてこないか?」
賢二「あー…うん、そだね…。」
観理「「絶望」をここまでリアルに体現できる人にゃ初めて会ったれす。」
勇者「盗子・黄錬邪・盗子・ペルペロスの順に始末するぞ。体力は温存しとけよ?」
賢二「いや、無駄な戦いが二回も含まれてるけど…。」
ベチャッ…(踏)
勇者「む?赤い…血?こりゃ人のだな…っとっと、なんだこりゃ?」
勇者は何かにつまづいた。
足元には、血まみれの何かが横たわっていた。
勇者「え…」
観理「んー?なんかあったれすか…って、ぎょっ!?ちょっ…!」
賢二「そ、そんな…こんなことって…!」

勇者「と…盗子……?」

盗子「・・・・・・・・。」
返事が無い。
ただの屍のようだ。

 

外伝(捌)