第三章

 

31:仲間〔4歳:LEVEL1〕
結局ペルペロスを倒せなかった俺は、未だ宿題に悩まされているという状況。
どうやらついに旅立つべき時を迎えたようだ。 しかし、やはり一人で向かうには…。
とりあえず盗子、賢二、チョメ太郎以外にもあと一人くらいは仲間(奴隷)が欲しい。
そんなことを考えながら俺は、旅立つ旨を伝えるために親父のもとへと向かった。
勇者「おいクソ親父、俺は旅に…」
怪物「ギャース!」
勇者「!!!」
怪物「ギャーース!!」
勇者「…オイ親父、テメェまさか…まだ「魔王召喚」とか企んでんじゃねーだろな?」
父「テヘヘ☆」
勇者「照れるとこじゃねーよ! …ん?あ、そうだ!コイツも俺にくれないか親父?」
父「ああ、もちろんだ。旅立ちの際にはきっと、力になってくれるだろうさ。」
勇者「サンキュ☆」


ザシュッ!(斬)

宿題は片付いた。

 

32:同一〔4歳:LEVEL1〕
特に冒険もしないまま夏休みは終わりを告げ、学校が始まる時期となった。
また若干級友が減っていたが、無理もないので驚いたりはしない。
あー、そういえば…新学期には早々に「あの行事」があると盗子が言ってたなぁ…。
教師「明日は遠足です。ちなみに目的地は春と同じ島になります。」
勇者「…オイ、また懲りずに「打倒ゴップリン」とかぬかす気じゃねーだろうなコラ?」
教師「いいえ、同じ轍は踏みません。それがあの子達の望みでもあるでしょうし…。」
生徒(ホッ…よかった…。)

教師「目的は「カタキ討ち」です。」

やることは同じだ。

 

33:準備〔4歳:LEVEL1〕
明日は地獄の遠足。だが俺は前回休んだのでよくは知らない。
何も知らぬまま敵地に乗り込むというのもなんだか不安だ。少し調べる必要がある。
ということで俺は、敵についての詳しい情報を聞くため教師の部屋へと向かった。
ガラガラガラ…(扉)
勇者「おいクソ先公、ちょっと聞き…」
教師「…ふぅ〜。あと3つ…いや、5つは必要ですねぇ…。」
勇者「・・・・・・・・。」

教師は花瓶作りに忙しい。

 

34:出陣〔4歳:LEVEL1〕
夜は明け、遠足当日。 生きて帰れるかわからない旅に俺は出る。
父「準備はできたか?集合場所まで獣車(じゅうしゃ)で送ってくぞ。」
勇者「む?怪しいな…。今まで車出してくれたことなんて一度もねーのに。」
父「そりゃあ私もついて…バッ、バッキャロー!何が怪しいだ失敬な!」
勇者「まさか…ついてくる気じゃねぇだろうなこの野郎?」
父「バカ!可愛い息子が遠足前に疲れたら可哀想だからに決まってるだろうが!」
勇者「そ、そうか…。すまん、考え過ぎた。 んじゃ頼むわ。」

親父の愛車は「口車」だ。

教師「あれ?ご父兄の方は同伴できませんよ?」

父「ガーン!!」

親父は攻撃を封じられた。

 

35:合掌〔4歳:LEVEL1〕
俺達を乗せた大獣車は、荒ぶる海上をひた走る。水陸両用とはなかなかの車だ。
教師「みなさん、せっかくの遠足ですし歌でも歌いながら行きましょうか!」
勇者(ケッ、くだらん。だがまぁ4歳児の遠足といやこんなもんか…。)
教師「それでは一緒に歌いましょう。「鎮・魂・歌」☆」
勇者「縁起でもねーよ!テメェ、俺達死なすことしか考えてねーだろ!?」
盗子「ち、違うって勇者!きっと去年の犠牲者のための歌だって!」
教師「いやいや。今さっき心臓発作で亡くなった、この運転手さんのために。」
生徒「うわーーー!!!」

目的地は「あの世」かもしれない。

 

36:登場〔4歳:LEVEL1〕
まだ目的地も見えていない海の上で、突如運転手がくたばった秋の遠足。
「もうダメだ」…そう思った時、突然謎の男が現れ運転を買って出た。救世主だ!
…と最初は思ったのだが、なんだか徐々に嫌な予感がしてきた。もしやコイツ…。
勇者「オイ、どうやってついて来たんだよ…クソ親父!?」
謎「な、何を言う!違う!私は謎のお助け仮面、「父さん」だ!」
父は言い切った。

 

37:相似〔4歳:LEVEL1〕
急遽運転することになった親父。だが大獣車なんて素人に運転できるのだろうか。
父「安心しろ。こう見えても私はかつて、この国一の大獣車乗りだった」
勇者「ほ、ホントか親父!」
父「…夢を見たことがある。」
勇者「ブッ殺す!!」
父「安心しろ、死ぬときは一緒だ☆」
勇者「笑えねーよそのギャグ!」
父「失敬な!ギャグじゃない!」
勇者「なお悪いわ!!」
盗子「ど、どうしよう勇者!?」
勇者「くっ、いざとなったら賢二あたりを車輪に噛ませて…」
賢二「え゛。」
盗子「もう!冗談言ってる場合じゃないってば!」
勇者「失敬な!冗談じゃない!」

似た者親子だ。

 

38:到着〔4歳:LEVEL1〕
出発早々てんやわんやな秋の遠足。
無事では済まないと思ってはいたが、まさか到着前に死にかけるとは思わなんだ。
とはいえ親父の運転は案外まともで一安心。なんだかんだ言って結構やりやがる。

そして
数十分
車は走り
俺達は
やっとのことで
到着した。

出発地点に…。

遠足は終了した。

 

39:宿敵〔4歳:LEVEL1〕
結局行ったのか行かなかったのかわからない結果に終わった秋の遠足。
だがもう一つの冒険科B組は無事着いたらしく、当然の如く人数が激減していた。
というわけでAB二組もまた統合され、冒険科はついに一クラスとなったのだ。
少年「やぁ。キミが元A組の勇者君だね?よろしく。」
勇者「なんだ貴様、いきなり馴れ馴れしい奴だな。ブッた斬るぞ?」
少年「フッ、その強気…さすがは僕がライバルと認めた男!」
勇者「俺のライバルになり得る男なんぞ存在しない。調子に乗るなよ雑魚めが!」
少年「いいやライバルだね!なぜなら僕の名は「宿敵(ライバル)」なのだから!」
勇者「・・・・・・・・。」

勇者「…俺じゃなきゃダメか?」
宿敵「ハッ!そういえば!!」

みんながライバルだ。

 

40:恋敵〔4歳:LEVEL1〕
クラス統合早々、いきなり絡んできた男「宿敵」。だがハッキリ言ってどうでもいい。
…かと思いきや、そうもいかない状況に。なぜなら奴も姫ちゃん狙いだったからだ。
宿敵「おはよう姫くん。僕の名は「宿敵」と書いて「ライバル」。よろしくね!」
姫「あ、はじめましてベンガル君。今年もよろしく。」
宿敵「え゛。」
勇者「ププッ!「ル」しか合ってねーし!」
宿敵「う、うるさい!笑うな!」
姫「あ、ミーシャ君おはよう。」
勇者「え゛。」

道は険しかった。

 

41:体祭〔4歳:LEVEL1〕
秋…。 遠足こそ不発に終わったものの、そう簡単に過ぎ去るはずはなかった。
そう、秋には逃れることのできないもう一つの行事があったのだ。
教師「みなさん、もうじき「体育祭(死ぬかもよ☆)」です。楽しみですね!」
勇者「オイ、なんだそのカッコ内は!サラッととんでもないこと言ってんじゃねーよ!」
教師「イヤですね〜勇者君、いい加減慣れてくださいよー。」
勇者「慣れるか!!」

教師「…ホントに?」
勇者「いや、ゴメン…慣れた。」

だが教師は慣れすぎだ。

 

42:賞品〔4歳:LEVEL1〕
ウチの体育祭(死ぬかもよ☆)は学年対抗。なおのこと死ぬかもしれない。
この学校で生き抜いている上級生というのは、かなりの強敵なはずだからだ。
勇者「オイ先公、そういや優勝クラスには何か賞品とかあるのか?」
教師「ありますよ。 「勇者の剣」」
勇者「なにっ!?そのネーミング…まさしく俺に相応しい!絶対手に入れてやる!」

教師「…という「あだ名」がもらえます。」
勇者「いらねーよ!!」

クラス全員「勇者の剣」。

 

43:変更〔4歳:LEVEL1〕
結局最上級クラスが優勝して幕を閉じた体育祭。
詳しいことは言いたくない。というか思い出したくもない。
そういえば、優勝クラスには「勇者の剣」というあだ名がホントに贈呈されたらしい
…のだが、当然の如く抗議が殺到し、後に別の賞品に変更されたのだった。


「勇者の槍」に。

こだわりどころが違う。

 

44:不運〔4歳:LEVEL1〕
冬の行事には「地獄の雪山登山」というのがあるらしい。俺に安息の日々は無い。
とはいえ、毎回なんだかんだで旅立ち損ねている俺としては少なからず期待もある。
未来の勇者として活躍するには、やはり実戦経験が多いに越したことはないからだ

が、今年は異常気象で雪が降らなかった…。

勇者は旅立てない。

 

45:一年〔4歳:LEVEL1〕
季節は巡り、冬は終わりを告げようとしていた。
思い返してみると、様々なことがあった一年間。短かったようで…長かった…。

春:無謀な遠足のせいで級友を失った。
夏:無謀な宿題のせいで級友を失った。
秋:恐怖の体育祭のせいで級友を失った。
冬:異常気象のせいで旅立つ機会を失った。

もうじき春が来る。そして俺は二号生になる。

この一年で得たものは無い。

 

外伝(壱)