新説昔話

 

新説:浦島太郎
昔々 あるところに、浦島太郎という青年がいました。

ある日、太郎がまだ日の高いうちから、ろくに仕事もせずに
フラフラしていると、海岸で亀をいじめている少年達を見つけました。

怒った太郎は、おとなげないくらい少年達をボッコボコにし、
全員を『亀甲縛り』で縛ってそこらの木に吊るし上げ、
小一時間ほど説教しました。

太郎「どうだクソガキども!少しは亀の気持ちがわかったか!?」

助けられた亀は、「いや、別に亀はそんな気持ちじゃ…」と
突っ込みたい気持ちでいっぱいでしたが、下手に逆らうと
とんでもない目に遭いそうな気がしたので黙っていました。


日も暮れかけ、少年達がすっかり何かに目覚めてしまった頃、
太郎は亀の背にまたがり、洋上を爆走していました。
助けてもらった恩返しをしたいと亀に言われたからです。

行き先は『竜宮城』という海底の城で、色々と素晴らしいものが
あるようなことを濁した感じで伝えられました。


陸を遠く離れ、元いた島が鼻くそぐらいの大きさになると、
潜る前にと亀は太郎に言いました。

亀「この酸素ボンベと、耐圧防護服を着てください。死にますよ。」

少しは時代背景を考えろよと太郎は思いましたが、
死ぬのはご免なので亀の言う通りにしました。



海中に潜ること数時間。
気が狂いそうなほど続いた暗闇が、ふいに光に砕かれました。
そして太郎の目には、世にも美しい城が飛び込んできたのです。
電飾とかもう、色々とウザいくらいキラキラしていました。

太郎「えっと…休憩で。」
亀「いや、竜宮城ですから。そういうアレとは違いますから。」

亀はそんな太郎に不安を覚え、この城が一体どういう城なのか
ということを一生懸命説明しましたが、長くなるので割愛します。


竜宮城は不思議なところで、海の底だというのに空気があったり
電気も無いのに明るかったりとツッコミどころは満載でしたが、
言い始めたらキリが無いので気にしないことにしました。


その後太郎は、城の主である『乙姫』とイチャイチャしたり、
タイやヒラメと舞い踊ったり踊り食いしたりと好き放題やって
しばらく過ごしましたが、さすがにそれも毎日続くと飽きて
しまったため、地上に帰ることにしました。

乙姫「そうですか…。残念です。」

頑張って止めようとした乙姫でしたが、太郎がまったく
聞く耳を持たなかったため泣く泣く諦め、お土産のような
ものを手渡しながらこう言いました。

乙姫「これは『玉手箱』という、この城に伝わるお宝です。
差し上げますが…でも決して開けないでください。」

なら一体どうしろと…?と太郎は思いましたが、
聞くのも面倒だったのでそのまま帰路についたのでした。



久々に地上に戻った太郎は、とりあえず家に帰ろうと
しました。が、どうにも周りの風景に見覚えがありません。

おかしいと思い色々と調べてみると、なんと太郎が竜宮城へと
旅立った日から、すでに数百年の月日が経過していたことが
わかってアラ大変。

途方に暮れた太郎は、去り際に乙姫に渡された
玉手箱のことを思い出しました。

決して開けるなという玉手箱…
しかし、そう言われればなおのこと開けたくなるのが人の性。
太郎は乙姫との約束を破り、箱を開けてみることにしました。

ですがさすがに自分で開けるのは危険だと判断した太郎は、
バイトを雇って開けさせることにしたのです。


するとどうでしょう。
箱を開けるとそこからは白い煙がみるみる立ち昇り、
それに包まれた憐れなバイトは一瞬でクソジジイに
なりさがってしまったのです。

怒った太郎はなんとか殴り込もうと画策しましたが、
自力であそこまで到達するのは不可能だという考えに至り、
仕方なく太郎は、国中の塩をかっぱらい、海に投げ込みました。

この攻撃を受けた竜宮城の民は、数日後に全滅したそうです。



海の水が塩辛くなったのは、これ以降だとか違うとか。
- 完 -