飛鳥ちゃん奮闘記 |
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少女「う、う゛ぅ…。」 少年A「す…好きだ飛鳥ちゃん!ず〜っと前から、好きだったんだ!」 少年B「いいや、俺の方が好きだね!もう一日中、キミが頭から離れないっ!」 少年C「ぼ、僕ですよ!僕の方が、舞姫先輩のコト…!」 少女「いや、だから…俺は、『男』だってばっ!!」 |
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俺は『舞姫飛鳥(マイヒメアスカ)』、中学3年生。誰が何と言おうと紛れもなく男だ。 そりゃ確かに、まだ成長期前で童顔だし、声変わりもしてないけど確実に男だ。 〜教室〜 飛鳥「なのに、なんでみんな告ってくるんだろうな…男が。男だけが…。」 少女「ん〜、やっぱ可愛いからじゃない?」 コイツは『相原翼(アイハラツバサ)』。物心ついた頃からの幼馴染みで、家も近所だ。 飛鳥「可愛い言うな!それは男の中の男を目指す俺にとって、最大の侮辱だぞ!」 翼「なら髪切ればいいのに。その腰まであるツヤツヤ・ストレートがマズいんだよ。」 飛鳥「いや…それはダメだ。舞姫家の者は、髪が長くないと死ぬって親父が…」 翼「じゃあ生まれてすぐ死んでるよね?」 飛鳥「Σ( ̄□ ̄;)!!」 |
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人生15年目にしてやっと知った衝撃の真実。俺って奴はなんてダメな子なんだ。
飛鳥「くそっ、なんてことだ…!俺はこれまで、親父に騙され続けてたなんて…!」 翼「言おう言おうと思ってたんだけど、オジさんの目がなんか…うん、超怖くて。」 飛鳥「俺は親父のその趣味が怖ぇよ!息子に何を求めてんだよ、ったく…!」 翼「でも私も気持ちはわかるかなぁ。あっくんは今のが一番似合うよ、可愛くて。」 飛鳥「決めた、切ってくる。 床屋だ!美容院じゃなく…なんと俺は、床屋に行く!」 翼「いや、そんな何か偉業を成しに行くような感じで言われても…。」 少年A「…オイ、聞いたか今の?」 少年B「ああ、これは一大事だ。仕方ない…やるか。」 少年C「野郎ども集合だ!可能な限りのメンツを集めろ、事態は一刻を争う!」 |
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学校帰りに床屋に寄ろうとしたのだが、どの店も閉まっていた。月曜じゃないのに。 〜舞姫家〜 飛鳥「チッ、なんてこった…。でも明日まで待てん!今日中になんとかしよう!」 父「お?やぁ飛鳥ちゃん。ちょっと見ない間にまた可愛くなっちゃったねぇ☆」 飛鳥「今朝会ったじゃねーか!テメェの知能は鳥並みか!?」 父「まったく惜しいなぁ。飛鳥ちゃんが女の子だったら、パパ絶対口説くのに。」 飛鳥「娘を口説くな娘を!つーか息子でさえ十分口説いてんじゃねーか変態め!」 父「母さん見てるかい?飛鳥ちゃんは今日も元気だよ。」 飛鳥「…ハァ、もういい。 ところで親父、バリカンとか持ってないか?」 父「ん?あるにはあるけど、そんな物騒なモノどうする気だい?」 飛鳥「いや、『バルカン砲』的なモノじゃねぇよ!つーかそれならあっちゃダメだろ!」 父「ま、まさかお前…髪の毛を…?」 飛鳥「ああ、坊主にする。やっぱ男らしく生きるならスパッと丸坊主だよな、うん!」 父「…それはヤメた方がいい。パパのためじゃない、お前のためにね。」 飛鳥「フン、また呪いとか言うんだろ?悪いがもうその手には乗らないぜ!」 父「実は髪の毛には…『神経』が、通ってるんだ。」 飛鳥「Σ( ̄□ ̄;)!!」 |
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〜翌日〜
飛鳥「ハァ、ハァ、今日も…朝から…体力が奪われていく…!チクショー!」 翼「ご苦労様あっくん。今日も大人気だったねー♪」 飛鳥「ったく、なんで最近急に増えたんだ?俺ってば前から変わってないよな?」 少年「それは…ついに動き出したからさ。『飛鳥ファンクラブ』…通称『AFC』がな。」 そう言って現れたのは、『鎌田和馬(カマタカズマ)』。俺が親友と認める男の一人だ。 翼「AFC…確か前までは、「遠くから見守ってこそ愛」って思想じゃなかったっけ?」 和馬「それが最近、トップが替わったらしくてな。告白が解禁されたらしい。」 飛鳥「いやチョット待て、そもそも俺はそんな組織の存在自体が初耳なんだが!?」 和馬「三大勢力の一つがついに動き始めた…これから絶対、何かが起こるな。」 |
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もう中三なのに、どうにも俺には知らないことがまだまだ多い世の中らしい。 なんで俺の知らない所で、俺に関わる何かが動きまくってるんだ…気に食わん。 〜放課後:とある教室前〜 翼「ねぇホントに行くのあっくん?猛獣の檻の中に飛び込むようなものだよ?」 飛鳥「虎穴にいらずんば虎児を得ず…動かなければ、何も始まらん。」 翼「やっぱり…そういう趣味だったんだね。」 飛鳥「え、いや、『虎穴』だよ!?何をどう聞き間違えてどう発展した!?」 和馬「安心しろ飛鳥、俺は否定しない。」 飛鳥「むしろ否定してくれ!もし俺がそうなったらボッコボコに殴ってでも止めて!」 翼「ところでさカズくん、AFCの新しいトップってどんな人なんだっけ?」 和馬「名は『牛山剛(ウシヤマゴウ)』…かなりイカれた男だよ。気を付けた方がいい。」 飛鳥「フン、問題無いさ。イカれたダチも多いしな、変な奴にはもう慣れた。」 ガララララ(扉) 全裸「お?」 |
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AFCの溜まり場らしい教室を開けると、中には全裸のマッチョがムキムキしていた。 予想を超えた変態だったので動揺がハンパないが、負けるわけにはいかない。 全裸「う…うぉおおおおお!飛鳥ちゃんだぁああああああ!ラブリィイイイイイ!!」 飛鳥「ギャー!やっぱ無理ぃーー!!」 全裸「む?おっと失礼、自己紹介がまだだった。」 飛鳥「その前にもっと失礼なモノをしまえよ!女の子だっているんだぞ!?」 翼「ついに目覚めたんだね、あっくん!」 飛鳥「お前のことだよ!俺のことじゃねーよ!?」 和馬「…久しぶりだな、牛山。いつ『施設』から出てきたんだ?」 飛鳥「えっ!?し、施設って…まさか…!」 全裸「鎌田か…久しぶりだな。 つい先日さ、俺が…『筋肉ジム』を出たのはな。」 |
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AFCの会長と和馬は、なにやら知り合いらしい。だから色々知ってたのか。 飛鳥「オイ、なんだよカズ、コイツお前の知り合いなのか?」 和馬「いや、まだ合わせたことはない。」 飛鳥「だからよぉ!なんでそう無理矢理下ネタに持ってく!?尻は関係ねーよ!」 牛山「飛鳥ちゃん…まさか、まさかキミの方から会いに来てくれるだなんて…!」 飛鳥「よぉ、確か牛山だっけ?やっと服を着てくれたようで何よりだよ。」 翼「じゃあ今度はこっちの番だね、あっくん!」 飛鳥「番って何の!?なんで対抗して脱がなきゃなんねーんだよ!?」 牛山「鎌田…テメェ、俺達の飛鳥ちゃんにベタベタと…ムカつくんだよテメェ!」 和馬「そんなに羨ましいか?俺としては、なんでコイツがモテるのかよくわからん。」 飛鳥「おぉ!さすがは心の友よっ!」 和馬「俺は、『ハード・ゲイ』なんだ。」 |
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俺が親友と認める数少ない男、和馬。その一番の理由は、俺に興味が無いことだ。 まぁゲイに対象外と言われるのは男としてダメな気もするが、迫られるよりはいい。 牛山「ったく、相変わらずの変態野郎め。男が好きとかお前どうかしてるぜ。」 和馬「フン、愛の形に性別なんて関係あるか?愚かだな。というか飛鳥も男だぞ?」 牛山「ああ、今ならお前とも分かり合える気がする。」 飛鳥「分かり合うな!数秒前の自分の発言にもっと責任を持てよ!」 牛山「だがしかし、俺はまだ『実は女の子だったルート』の線も捨ててはいない!」 飛鳥「ちゃんと生えてるよ!お見せできないのが残念だがしっかりと!なぁ翼!?」 翼「へ…?えっと、そこで振られても超困るんだけども。」 飛鳥「昔見ただろ!?が、ガキの頃はホラ、一緒に風呂入ったことも…あるし!」 翼「…でもそれ、ちっちゃい頃の話だよね?」 飛鳥「取れねーよ!熟したらポロッと落ちる果実的なモンじゃねーから!」 和馬「任せろ、いい国を知ってる。」 飛鳥「取らねーよ!!」 |
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援軍として連れて来たはずの二人がまったく役に…むしろ敵で困る今日この頃。
飛鳥「だがまぁ俺が男なのは確かだ。変な夢を見てるなら今のうちに目覚め…」 牛山「ん?うん、まぁそれならそれでいいや。そんなの大した問題でもないしな。」 飛鳥「えぇっ!?いや、それ以上にデカい問題って無いだろ!おかしいだろ!?」 牛山「ん〜…じゃあ逆に聞くが、なんで男だからって諦めなきゃならないんだ?」 飛鳥「え…いや、だってホラ、男同士じゃ結婚もできないし、子供だって…なぁ?」 牛山「ということは、キミは…中学から結婚を意識して恋人を探すというのか?」 飛鳥「え…?いや、まぁそこまで先走った考えはしないが…」 牛山「好みの顔、声、性格の子と付き合いたい。一緒にいたい。それだけでいい!」 翼「あ〜、確かにその理屈だと、可愛ければ性別関係ないよね。」 飛鳥「そ、そうだ!中学男子と言えば、そろそろ性に目覚めるお年頃!となれば…」 和馬「いや、その点は問題無い。こっちの世界にも色々と、素敵な文化がある。」 翼「むしろ結構凄まじいって聞くよね。」 飛鳥「だからなんで後押しする側に回ってんだよ!?お前らはどっち側なんだ!?」 翼「…面白い方?」 飛鳥「鬼ぃーーーー!!」 |
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敵は想像以上に手強く、男だろうが構わないというビックリな発想の持ち主だった。 だが、だからといって引き下がるわけにはいかない。平穏な日々を取り戻すんだ! 飛鳥「う、うむ…まぁお前の言い分はわかった。だが!俺は期待には応えられん!」 牛山「だ、大丈夫だ!絶対…絶対幸せになればいい!」 飛鳥「してくれよ!なんで大事なトコを相手に委ねるんだよ!?」 翼「うっかり本音が出たね、あっくん!」 飛鳥「ハッ…!って、今のは違ぇーよ単なるツッコミだってば!」 和馬「そうか、飛鳥は『攻め』なのか。意外だな。」 飛鳥「『攻め』とか『受け』とかの話は今してねーよ!頼むから戻ってきてくれ!」 牛山「どうすれば…俺は、俺達はどうすればいいんだっ…!」 飛鳥「だから諦めてくれればいいんだって!」 翼「ふむぅ、やっぱ私が…一肌脱ぐしかないようだね。」 飛鳥「ちょ、チョット待て翼!なんか、とてつもなくイヤな予感がするんだが…?」 翼「題して、『第一回:飛鳥ちゃん争奪戦』を…開催しちゃおうっ!」 飛鳥「そ、争奪戦!?」 |
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翼の口から飛び出したのは、なんと俺の争奪戦とかいう怖ろしいイベントだった。 昔からコイツは、急に妙なことを言い出し…やり遂げる習性がある。止めなきゃ…! 飛鳥「ちょ、ちょっと待て翼!争奪戦とかおかしいだろ!?」 牛山「そ、そうだ!飛鳥ちゃんはモノじゃないんだ、皆で愛でるべき尊い存在で…」 翼「とか言っちゃって、ホントに『みんなの飛鳥ちゃん』で満足できるの〜?」 牛山「う゛っ、それは…。」 和馬「まぁ無理だろう。でなきゃ告白解禁なんてしない。独り占め、したいのさ。」 飛鳥「と、とりあえず聞くだけ聞いてみるが…一体、何をさせる気だ?」 翼「あっくん…世の中にはね、知らない方がいいってコトもあるんだよ?」 飛鳥「いや、結局それを味わうんだから知らないままじゃいられねーだろうが!」 翼「大丈夫、きっと…面白いから☆」 飛鳥「お前がだろ!?」 |
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翼はもう完全にスイッチが入っていて、もうお手上げ状態で嫌な汗が止まらない。 飛鳥「た、頼む…頼むよ和馬…なんとかしてくれ…。」 和馬「フッ、無茶を言うな。今までこの展開からどうにかなったことがあったか?」 牛山「い、一応確認するが、その…勝者は飛鳥ちゃんに、何をしてもいいんだな?」 翼「愛があればなんでもオッケー!」 飛鳥「その愛が無ぇから困ってるんだろうが!頼むから俺の意思を尊重してくれ!」 牛山「うぉおおおおおし!みんなー!集合だぁあああああああああ!!」 飛鳥「ちょっ、待っ…」 ダダッダダッダダッ!(走) |
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〜その頃〜 少女A「そ、総長大変です!かくかくしかじかで、なんか妙なイベントが…!」 総長「舞姫飛鳥…ったく、相も変わらず目障りな子だねぇ。ムカつくったらないよ。」 少女B「どうしましょう?攻めるなら、均衡が崩れるその時がチャンスかと…!」 総長「ふぅ…。ついに、動く時が来たようだね…この、『落鳥会(ラクチョウカイ)』が。」 |
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翌日…。誰の仕業か、争奪戦の話は既に学校中に知れ渡っていた。もう戻れない。 〜教室〜 飛鳥「ハァ〜〜…。なんで…なんでこんなことに…。」 翼「あっくん、元気出して?」 飛鳥「お前が言うなよお前がっ!」 和馬「噂では、『落鳥会』まで動き出したと聞く。こりゃあ…確実に荒れるなぁ。」 飛鳥「ご、語感的に、なんか殺されかねない空気を感じる名称だが気のせいか?」 和馬「ああ、確かにAFCとは対を成す組織…好きな男をお前に奪われた女達だ。」 翼「別名は『飛鳥死ね死ね団』。乙女心を傷つけた責任は、重大だよあっくん?」 飛鳥「な、なんで俺は…自分の知らん所で無駄に恨みを買ってるんだろう…。」 翼「よっ!この買い物上手ぅ!」 飛鳥「嬉しくねーよ!?」 |
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聞けば、俺を好きな奴だけじゃなく、嫌いな奴まで参加するという今度の争奪戦。 どっちが勝っても無事に済みそうにない。これは…のんびりしてはいられんな。 飛鳥「…よし、決めた!俺は優勝する!優勝して、俺自身を手に入れてやる!」 翼「ナルシストだねぇあっくん。」 飛鳥「そうじゃねーよ!俺が優勝して、俺の貞操を守る…もうそれしか無いんだ!」 少年「フフ…そういうことなら、我々も立ち上がらにゃなるめぇなぁ。」 そう言って現れたのは、『子安準(コヤスジュン)』。コイツはかなり頼りになる仲間だ。 飛鳥「おぉ、ヤス!助けてくれるのか!?スッゲー助かるよマジで!」 子安「優勝したら…チュウでいい。」 飛鳥「ってお前もかよ!俺らは友情という熱く固い絆で結ばれてる仲だろ!?」 和馬「そうか、『飛鳥親衛隊』まで…。三大勢力勢ぞろいだな、こりゃ面白い。」 翼「あっくんを支える、縁の下の力持ち集団…相手にとって不足は無いね。」 飛鳥「敵なのか!?やっぱお前は敵側の人間なのかよ!?」 子安「さ〜て、イベントは一週間後かぁ…気合い入れてくぜぇアーちゃん?」 飛鳥「おうよ!ぜってーみんなを、黙らせてやるっ!!」 |
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